コラム

Googleが日本の法律に従うならば、Googleは確実に違法


リンクを教えただけでも「児童ポルノ公然陳列」の「幇助」となって逮捕されたり、掲示板運営者が自分で画像をアップロードしたわけでもないのにわいせつ図画公然陳列の疑いで逮捕されたり、今までの反動で急速に保守化してネット全体を取り締まる動きが加速しているわけですが、こういう事件が起きる度に「それじゃあ検索エンジンもアウトだろ」という話が出ますが、大体は「国内にサーバがないから日本の法律が適用されず、合法運営されている」とかいう話に落ち着きます。

しかし、Googleの現在の運営方針であれば「日本の法律が適用されるのは前例から言っても確実であり、違法行為を行っているあるいは幇助しているため違法である」ということになり、家宅捜索や逮捕されてもおかしくない、となります。理由はGoogleが中国において行っている活動に理由があります。


是非ともGoogleやYahoo!、MSNやgoo、Infoseekなどなどの検索エンジン会社には連合して、民事に適用される「プロバイダ責任制限法」の「刑事版基準」を作成するためのロビー活動や提言を積極的に行っていただきたいものです、個人ではこういうのはなかなか声を上げてもまとまりにくいというのが実情なので。最近は各企業とも収益も増えているそうですし、こういう事案に対して「先行投資」するのは必須ではないでしょうか。

というわけで、「Googleが日本の法律に従うならば、Googleは確実に違法」になってしまうという詳細、それを回避するためにすべき3つのこと、そして、我関せずを決め込んで何もしないと最後に日本がどうなるかについて。
事の発端は昨晩の2007年5月23日水曜日放送の「TBS「筑紫哲也 NEWS23」」にて「グーグルが世界を変える?」という特集が放送されたことです。

この中でエリック・シュミットCEOに筑紫哲也氏がインタビューしており、その中でGoogleが上場するときに掲げた「Don't Be Evil」(邪悪にならない)というフレーズを紹介、さらにGoogleは中国では「天安門」という検索フレーズを中国政府の要請に従って検閲しているということも実際の中国版の検索結果画面を用いて説明していました。この中国での対応については約1年前から大問題になっており、鮮明に記憶している人もいるのではないかと。以下の記事にそのいきさつが書かれています。

米公聴会、ハイテク大手4社「中国政府の圧政に加担」を追及

グーグル社のエリオット・シュレイジ氏は、「中国でビジネスを行なう際の必要条件の1つが、自主規制だ。これはグーグル社にとって、企業としての最も基本的な価値と責任に矛盾することだ」と述べた。

米Google,自身が「evil」であることを認める:ITpro

米Google共同創設者のSergey Brin氏は6月第2週,Googleが中国政府からの圧力に屈して「don't be evil(悪行にはかかわらない)」という信条を曲げ,同社の中国向けWebサイトで検閲を行った事実を認めたのだ。

しかしながら、あくまでもGoogleとしては「自主規制」であるということになっていたはず……なのですが、昨晩のインタビューではなんとエリック・シュミットCEOが直々に「中国は唯一の例外です。我々は中国国内の法律に従っているに過ぎない」と発言。つまり、その国の法律には従う、と。

このサービス展開している国の法律に従うというのは、マイクロソフトのMSNやYahoo!などは既に表明していますが、Googleまでもがそういう方針になっていたとは驚きです。

この理屈だと、最初に書いたような最近の日本国内で起きているいろいろなネット関連の刑事事件について、GoogleもYahoo!もMSNもあらゆる検索エンジン会社が従わざるを得なくなってしまうのですが……「民事」はともかくとして、「刑事」のジャンルにまでとなると、誰かが告訴したり告発すればそれをきっかけとして警察が動くことはないわけではない、と。リンクを教えただけでも「児童ポルノ公然陳列」の「幇助」となって逮捕されているのですから、検索エンジンはみんな同様の目に遭う可能性があるわけです。おそらく、会社内の担当者が全員逮捕されることになるでしょう。「クローラーが全自動で行っており、人為的に手を加えることは出来ません」と主張すれば、さらに上の責任者が逮捕されるだけです。

また、掲示板運営者が自分で画像をアップロードしたわけでもなく、さらに逮捕者が出てからはかなり細かく規則を作って削除していたにもかかわらず、過去の行いをさかのぼって「幇助」ではなくわいせつ図画公然陳列の疑いで正犯で逮捕というようなことが可能なのであれば、もうGoogleやmixiなどが規制されるのも時間の問題になるでしょうし、おそらくあらゆるネット上でユーザー生成型コンテンツを提供する業種が大規模な影響を受けることになり、不利益を利用者全員が被る……というのもあながち大げさな予想ではないはずです。正犯というのはつまり、画像をアップロードした人間と同じ罪がお前にもあるよね、ということです。

こうなるとブログサービスの運営はほぼ不可能になります。なぜなら、今回の逮捕劇は「違法なコンテンツを一つ残らず完璧にリアルタイムで削除することができないのであれば管理運営すべきではなく、それでもなおサービス提供を続けるのであれば全員逮捕だ」という意味だからです。ブログ記事すべてに対してサービス提供業者は事前に人力で検閲し、問題がないものだけを表示するという方法でしか対応できません。ちなみに、逮捕された画像掲示板も同じ事をしていたようですが、過去の事例にさかのぼって逮捕されているため、既存のサービス提供業者は全滅です。一度サービスを全閉鎖するしかないでしょう。ソーシャルブックマークのコメント欄や、ブログのコメント欄、トラックバックなどについても管理者およびサービス提供業者は責任を負うと言うことになるので、裁判でも徹底的に争ってやるぜ、というような人や法務部を備えている会社でない限りはもうビジネスができなくなってしまうでしょう。

さらにそれに加え、著作権法の「非親告罪化」も現時点では海賊版対策が名目とはいえ、着実に検討が進んでいるという現状があります

スラッシュドット ジャパン | 著作権法の「非親告罪化」が密かに進行中?

つまり、今までは著作権を持っている人でなければ刑事告訴できなかったものが、警察の独自判断によって好き勝手に逮捕できるようになる、というわけ。これについてはあまりにも弊害が大きくなるため、かなり厳しい条件が付くというか、明確な基準を定義しておかないととんでもないことになるわけでして。

こういうのに対してGoogleや検索サービスであるMSNを運営するマイクロソフト、さらに日本では最大の検索サイトYahoo! JAPANなどが声を大にして抗議したり、意見すべきだと思うのですが……自社利益を最大化するために必要な行為のはずなので、株主からの賛同も得られるでしょう。むしろこういう件に対して何も行動しないというのは非難されこそすれ、ほめられる行為ではないはず……。

まとめると、現在の日本国内のインターネットに関する状態で「確実に何とかしないと日本の経済自体に悪影響を与える」と思われるので早急に実行すべきなのは、

1.刑事に適用されるプロバイダ責任制限法
民事に適用されるプロバイダ責任制限法と同じように、刑事に適用されるプロバイダ責任制限法が必要。現在は基準が全くないので、警察の独自判断によって「幇助」や別件による捜査が行われており、一罰百戒的効果を狙うがあまり大きな矛盾が生じている。逮捕すべきを逮捕できず、どうでもいい小物を捕まえるという批判に応える方法はこれ以外にあり得ない。ビジネスで考えると、刑事事件になって家宅捜索とか逮捕される危険性がちょっとでもあればビジネス展開できなくなる。特に「Web2.0」の代表格である「YouTube」のようなサービスを日本で運営するのはリスクが大きすぎる。また、警察は送検さえすれば点数が上がるということで無茶苦茶な送検を行うことになって、その被害は検察と裁判所が食う形になり、費用対効果の面で勝てもしない事件が送られてくることとなって貴重な血税が無駄に使われ続けることになる。もちろん逮捕されて不起訴になろうが、起訴されて裁判で無罪になろうが、報道はされないので名誉回復はあり得ない。ベンチャー企業であれば、勝訴するころには資金が尽きてつぶれてしまう。

2.ネットユーザーの意見を国会にまで持って行くシステム
著作権法の「非親告罪化」のようなネットに関わる全企業について無視できない重要事案に対して、いわゆるロビー活動を行う団体の創設が必要。つまり、ネットユーザーの意見を拾い集めて集約し、国会にまで持って行くための一連のシステムを持った団体を作る必要がある。そうしないと、日本におけるネット上でのビジネスはいつまでも発展しないし、どんどん衰退していく。グローバル化が叫ばれ、国際競争にさらされている中で実はネットに関して日本が意外なほど遅れている原因は、まさにここにある。経団連ほどの威力が必要だとは言わないが、せめて「親ネット派議員」みたいなものを送り込むぐらいのことはできてもいいはず。

3.ネットについての知識がない人間を法曹の中に置かない
ネットが絡む犯罪に対しては地域ごとの「管轄」という考えが通用しない事例が多いため、管轄を超えてネット事件を専門に扱う警察部署の創設が必須。ネットに詳しいのレベルを超えて、ネットのエキスパートとプロフェッショナルによって構成される部署を作らないと、ネットのことを知らない刑事が勝手に暴走する事例が多発して警察の面目を潰しかねないし、警察国家を作るつもりかと非難され続け、最終的には国民の協力が得られなくなって信用が失墜する。また、同様の理由で検察や裁判官についてもネット専門の人員を十分に配置すべき。そしてネットについて無知な人間や誤解を抱いている人間が絶対に担当しないように制度を改めるべき。最終的には、ネットについての知識がない人間はそもそも警察・検察・裁判官のような職業には就けないように試験制度を変更すべき。司法や法曹に携わる人間の中でも国家権力に関わる人員は間違った判断をしないようにするため、常にエキスパートであるべき。そうでなければ理不尽な事態はいくらでも起き続ける。実際にネットに関するトラブルを警察に相談しても、ネット専門の人員の数が少なすぎるため、よほどの事例でないと対応してくれないのが実情です。取材した限りでは、押収した証拠品の捜査などもネット関連は順番待ち状態で、最低でも1ヶ月待ちはザラとのこと。こうなるとコストが限りなく高くなるので、余計に見せしめ効果を警察は狙う……という悪循環に陥っています。

あと、本来こういうことが起きたら真っ先に「おかしいよ!」という点を調べてきちんと報道するのが、既存マスコミ、特に新聞とテレビの役目なのではないですかね……記憶が確かなら「事実を伝える」と「権力を監視する」が原点だったはずなのですが……それをまるで他人事のような報道っぷりで警察の報道発表を右から左に流すのもいいのですが、そのあとのフォローもちゃんとやらないと……あるいは、もう既存のマスメディアはその寿命を終えつつあり、だからこそマスメディアを介さないで真実を伝えるインターネットが邪魔なのでしょうかね……。

最後に、今、何もしないと最後に日本がどうなるかを「彼らが最初共産主義者を攻撃したとき」の引用で示します。

ナチ党が共産主義を攻撃したとき、私は自分が多少不安だったが、共産主義者でなかったから何もしなかった。

ついでナチ党は社会主義者を攻撃した。私は前よりも不安だったが、社会主義者ではなかったから何もしなかった。

ついで学校が、新聞が、ユダヤ人等々が攻撃された。私はずっと不安だったが、まだ何もしなかった。

ナチ党はついに教会を攻撃した。私は牧師だったから行動した―しかし、それは遅すぎた。

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in ネットサービス,   コラム, Posted by darkhorse

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